米国株の税金はどうなる?二重課税の仕組みと対策

米国株は「配当」も「成長」も魅力ですが、税金を正しく理解しないとリターンを目減りさせます。本記事では、なぜ二重課税が起こるのかどう対策できるのかを初心者にもわかりやすく整理します。

まず結論(要点まとめ)

  • 配当:米国で10%(W-8BEN提出前は30%)源泉徴収 → 日本で20.315%(所得税15%+住民税5%+復興0.315%)。
    確定申告で「外国税額控除」を使うと、米国の10%分の多く(上限あり)が差し引けます。
  • 売却益:米国では非課税(非居住者の上場株式等のキャピタルゲインは原則課税なし)。日本で20.315%
  • 二重課税の対策:配当を申告に含め、申告分離課税+外国税額控除(または総合課税+配当控除の検討)。「申告不要」を選ぶと控除が使えない点に注意。

米国株「配当」課税の流れ

  1. 米国で源泉徴収:日米租税条約により
    ・W-8BENを提出:10%(多くの国内証券は自動提出済み)
    ・未提出:30%(提出していないと取り過ぎになります)
  2. 日本で課税:原則20.315%。特定口座(源泉徴収あり)なら国内分は自動で天引き。
  3. 確定申告で調整:米国分10%は外国税額控除で日本の所得税から差し引き可能(上限あり)。

二重課税はなぜ起こる?

配当は発生国(米国)でも居住国(日本)でも課税対象となるため、そのままだと合計約30%超の負担になります。これを条約に基づく外国税額控除で調整し、二重取りを防ぎます。

外国税額控除のキホン

控除限度額の範囲で、米国で払った税(配当10%)を日本の所得税等から差し引けます。

控除できる上限の目安:
所得税額 ×(国外所得(配当等)/ 総所得)
※住民税にも別枠の外国税額控除制度があります。詳細は自治体案内を参照。

具体例(概算イメージ)

米国株配当 $100 を受け取る場合(W-8BEN提出、円換算の影響は省略):

  1. 米国で10%源泉 → $90受取
  2. 日本で20.315%課税(申告分離ベース)
  3. 確定申告で外国税額控除を適用 → 米国分10%の多くが控除・還付(限度額内)

結果として、実効税率は日本の20.315%に近づくイメージ(収入・他の所得状況により異なる)。

売却益(キャピタルゲイン)の課税

  • 米国:非居住者は原則課税なし(不動産等を除く)。
  • 日本:20.315%。特定口座(源泉徴収あり)なら年間の損益通算や源泉徴収が自動で行われます。

申告方式の選び方(配当)

方式特徴外国税額控除こんな人向け
申告不要証券会社で国内20.315%を源泉徴収。確定申告なし。不可(二重課税が残る)配当が少額で手間をかけたくない
申告分離課税株の譲渡益と同じ分離課税。損益通算や繰越控除が使える。可能(一般的な選択肢)配当が一定額あり、控除で取り戻したい
総合課税他の所得と合算。累進税率だが配当控除あり。可能所得水準や配当額次第で有利なケースも

最適解は人によって異なりますが、初心者は「申告分離課税+外国税額控除」が扱いやすいことが多いです。

実務の流れ(チェックリスト)

  1. 証券口座のW-8BENが有効か確認(米国源泉10%適用に必須)。
  2. 配当を申告分離課税で申告(特定口座なら年間取引報告書を利用)。
  3. 外国税額控除の様式に、米国源泉額を記入(限度額計算)。
  4. 住民税の外国税額控除が使える自治体なら、併せて手続き。
  5. 翌年以降も継続的に見直し(配当額や所得が変わると有利不利が動きます)。

よくある疑問Q&A

Q1. QQQやVOOなど米国ETFの配当も同じ?

はい。米国籍ETFの配当は同様に米国10%→日本20.315%で、確定申告で外国税額控除を使う流れです。

Q2. NISAの場合は?

日本の課税は非課税ですが、米国での10%源泉はかかります(NISAでも外国税額控除は基本使えません)。

Q3. ドルで受け取り・円に替えるタイミングは関係ある?

日本の課税計算は課税関係が生じた日の為替レートで円換算します。受取通貨の違いよりも、課税時点のレートが重要です。

免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、最新の法令・通達、個別事情を踏まえた税務アドバイスではありません。具体的な申告は税務署・税理士にご確認ください。

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